沖合 飴山瑛
風がある
雲の切れ間を
すり抜けて
開け放した窓
外ばかり見ているのに
手ひとつも
伸ばさない
昼まで寝ていたから
空がずっと遠い
体の中に
朝が閉じ込められている
埋められた本棚に
過去がある
ひとりになれない
だからずっと
ふるえていた
夢見るために
夜を泳ぐ足
背ははがれてゆき
薄く透けた
魚が飛び立つ
丸い鱗
真珠に似て
ひかる
月の周りには
叫びが根を張って
眼の裏から
蔦を伸ばす
こころはからだを巡る
わたしは
どんどん
ゆるむ
丸い関節が
きりきりと擦れ
小さく粉が舞う
打ち捨てられたマグ
罅が入っている
実感だけを頼りに
飛び去ったわたし
追いかけてみては
浅い眠りが
海のすがたをとる
はなれてゆく
わたしたちを
つなぎとめる
枝にばかりすがりついては
滅びてしまう
いまを
懐にしまい込んでいる
どこかに行きたい
果があるのなら
そこにきっと
真がある