9月17日から9月19日までのご投稿分の感想と評です
2024年9月17日から9月19日までのご投稿分の感想と評です。
「ニキビ」 喜太郎さん
喜太郎さん、今回もご投稿くださりありがとうございます。
僭越ながら御作「ニキビ」の評を送らせていただきます。
短い作品ですが、惹きつける力のある作品でした。
ニキビ、私は中学生の時に顔中に出来てとても嫌な思いをしました。
当時にこの作品の中の「あなた」のような人が声をかけてくれたら
嫌な思いは一転したでしょう。
何気ない言葉、何気ないやさしさが心を救うことがあります。
大袈裟ではなくその後の人生に影響を与えることも。
<あんなに嫌だったニキビ
また出来てもいいよ
と、思えるほど主人公の心は軽やかに動きます。
読後の爽快感とあたたかさを感じた一篇でした。
御作佳作半歩手前とさせていただきます。
「不調法」 津田古星さん
津田古星さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「不調法」の評を送らせていただきます。
短編小説を読んでいるような心地になりました。
ぐっと惹きこむ力がありました。
主人公の心情がじわりと広がります。ヒリヒリとして切ない。
結ばれなかった心が寂しく揺れます。それを今の自分が
そっと掬い上げて当時の二人を俯瞰するように見つめます。
二十四歳で何もかもわかり合えることは無理だった。
お互いを慮ることが出来なかった。
<いつか謝りたい
この気持ちを抱いて
<いつも静かに話を聞くだけの私にも
真っ当な怒りがあったことを
彼は知っただろう
と、当時の自分の言葉に後悔しながらも
それでも訴えずにはいられなかった思いを認めます。
切なさは残りますが、時を経て大人になった主人公の強さを
感じられた一篇でした。
御作佳作とさせていただきます。
「月景」 freeBard さん
freeBardさん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみとさせていただきます。ご了承ください。
では、御作「月景」の感想を送らせていただきます。
初連からぐっと惹きこんできます。
“心の水面”とは?と思うより先に映像が展開されていくようです。
二連目、月景のゆらめきから感じ取ったものを、優雅に表現しています。
やわらかく舞い踊っている様子を見ているような心地になります。
三連目で「私」はゆらいで景に解けます。水鏡は月景のみを映します。
理由のあるなし、心情の強弱を描かなくても伝わるものがある。
<私の情緒だけがぼんやりと
ここに在るように思われるのです
ふわりと舞って心に留まる花びらのような一篇でした。
次回のご投稿お待ちしております。
「神様と悪魔と僕」 相野零次さん
相野零次さん、初めまして!
ご投稿くださりありがとうございます。
初めての方は感想のみさせていただきます。ご了承ください。
では、僭越ながら御作「神様と悪魔と僕」の感想を送らせていただきます。
<僕は愛を信じない。裏切りこそが真実だ
主人公に何があったのでしょう。生きていることに苦しみを感じ
痛みを感じもがいているように見えます。
人を殺めてしまっても「僕」は救われません。裁きを受けて罰せられても
入院しても、薬を飲んでも。不安が膨らみ主人公の心より悪い方へ
導きます。
暴走していく主人公を恐ろしく感じながら、ふと思いました。
誰かを攻撃したいという気持ちと誰かを救いたいという気持ちは
表裏一体なのかもしれない、と。
人の心の複雑さが可視化されたように見える一篇でした。
またのご投稿お待ちしております。
「背中」温泉郷さん
温泉郷さん、今回もご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「背中」の評を送らせていただきます。
初連で、この二人の関係性がなんとなく伝わります。
主人公は相手を気遣いながら誕生日のこと伝えます。
背中を見るだけで微細な変化を感じ取り、相手の求めやすい
流れを作ります。
答えない背中の描写が秀逸で
<背中は焦りと怒りで
岩のように凝っている
読み手も「背中」を見ながら様子を伺えます。
キーボードの打つ音、速さまで聞こえてくるようです。
<何でも好きなものごちそうするけど?
<何でも好きなものでいいよ
には、答えず、
<いくらでも大丈夫!
で、背中がこっちを向きます。面白いです。
>「それは 聞き捨てならないわね」
に、
<言葉使いは少々間違っているけど
そんなことは指摘してはならない
心の中でツッコミつつ、控えるところなど
二人の力関係が見えます。
それでも怯むのではなく、むしろ楽しんでいるような
高揚感があってユーモラスに感じました。
主人公の鼻歌か口笛が聴こえそうな流れがよかったです。
御作佳作とさせていただきます。
「壊れサンダル」 小林大鬼さん
小林大鬼さん、今回ご投稿くださりありがとうございます!
僭越ながら御作「壊れサンダル」の評を送らせていただきます。
<壊れサンダル引きずって
雨ん中歩いて行く
疲労感と徒労感を感じます。
この詩の主人公は台風を気にして家に
いましたが、空腹でやむなく雨の中を
出ることにします。
<傘差して向かったら
サンダルが壊れてしまう
<目当ての店は昼には店じまい
他の店々も閉じたまま
<薄暗い夜道を
泥濘んだ夜道を
心も足元も雨が染みる
夏の時期なのに寒さを感じます。心が疲弊していくようです。
壊れサンダルと主人公がひとつに繋がったような
主人公の心情と合わさったような物悲しさを感じました。
<心破れた一日
が、癒える日が来るでしょうか。少しでも心が晴れる日が
来ることを願いました。
御作佳作とさせていただきます。