ぼくよりおしゃべりなしっぽ 松本福広
きょうは ひとりでおるすばん
ひとりでいると たいくつだ。
たいくつなときは しっぽで
えをかいたりする。
しっぽで じぶんのせなかをたたく。
だれかいるの? とふりむく。
もちろん だれもいない。
もういちど しっぽで せなかをたたく。
じつは だれかいるのかな?
やっぱり だれもいない。
しっぽで ぼくのきもちをえがく。
うれしいときは ぶんぶんふれる。
かなしいときは しょぼんとうなだれる。
うれしっぽ おこりっぽ たのしっぽ
かなしっぽ いまは さみしっぽ。
だから うなだれる さんぽてまえくらい。
もっとかなしくなると
しっぽがおちてしまうのか。
もっとうれしくなると
しっぽがとんでいってしまうのか。
まだしらないきもちもあるのだろう。
ひとりでことばあそびをする。
しっぽを ちょっぽ とよんでみる。
ちょぽんと いけに ひとつちいさなものが
しずむかんじで さびしいかんじ。
ちょっぽ を ちょぴん とよんでみる。
なにか たのしそうなことを
ひらめいたようなおとに なるのかな?
しっぽを しっぽっぽ とよんでみる。
しっぽだけ はねて
とんでいってしまいそう。
ぼくをおいていかないでほしい。
げんかんが ひらく おと。
おかあさんがかえってきた。
ただいま。
おみやげは おやつのびすけっとだよ。
てをあらっておいで。
そういわれて ぼくは せんめんだいへ。
しっぽがすこしゆれていた。