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スレッドNo.4624

執着 津田古星

いつか
おじいさんとおばあさんになったら
あなたに会いたいと
二十四歳の私は思った
時という濾紙が わだかまりを濾過して
透明な友情だけがビーカーに流れ落ちれば
笑顔で会えるだろうと

もう十分おばあさんになったから
勇気をふり絞って
あなたの安否を尋ねてみた
大病をしたあなたが生きていて 
家族を持てたと知った

一人一人が電話を持ち
瞬時にメールが送れる時代まで生きるなど
四十年前の私達は 想像もしなかった
電話の声も話し方も 昔のままだったけれど
互いに家族があるのだから
青春の日の感情など 話題にはできない

それでも私の電話と手紙に
あなたはペンを執り返事を書き
慣れないメールも打った
あなたは昔と同じに
節度をもって礼儀正しく熱心に
遅れがちに返信をしてきた
そのうち私は思いがけず
自分の認めたくないものに
コツンと突き当たった
メールを打てば返事を待つことに疲れた


長い時を経ても
濾紙の上に残るものは
淡い恋ではなく
あなたに褒められたいという欲だったから
おじいさんとおばあさんになっても
会うことは叶わない

編集・削除(編集済: 2024年10月09日 11:10)

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