充足 秋乃 夕陽
前日降り続いた雨は畑を潤し
昨日一昨日のひび割れた白っぽい地面とは
打って変わって
まるで沼地のように
どろっと水を豊富に含んだ地となっていた
そこから生える緑色の若い芽は
眩しそうに群れながら生え
ジョウロで水を与えるごとに
水滴を弾きながらより鮮やかに輝く
小松菜
キクナ
カブラ
ラディッシュ
大根
白菜
水菜
柔らかな可愛い手のような葉を広げて
精一杯陽射しを受け止めている
そのどこまでも伸びてゆこうとする生命力
小さな命は私の心をくすぐり
よりいっそう育ててゆきたい意欲を持たせる
水やりだけでは飽き足らず
ぬかるんだ土から
生えすぎた小松菜の葉を間引いたり
発育を邪魔する雑草は引き抜いたりしているうちに
時間はあっという間に過ぎてゆく
畑に来たのが十二時前ぐらいだったのが
いつのまにか十四時過ぎになっていた
心地よい風が頬を撫で
疲労というよりも充足感が胸を撫で下ろす
熱った頬に伝う汗を手の甲で拭いながら
泥まみれの長靴も手袋もTシャツもズボンも
我が子を育てている証なのだと