とある魔女のハロウィンについての説明 松本福広
とある魔女と孫の見習い魔法使いサンドリヨンのお話。
こんばんは、サンドリヨン。
人間たちのハロウィンの話かい?
ああ、いいよ。きかせてあげよう。
人間たちのハロウィンは怖いんだよ?
サンドリヨンにとってハロウィンといったら
街に私たちが真夜中の魔法をかける。
暗くなった街並みに色とりどりの魔法陣の灯りがイルミネーションのように踊りだす
子どもたちはススキを空飛ぶほうきに見立ててお道化ながら街を練り歩く
街には大人たちが芋のプリッツ、かぼちゃのクッキー、星屑金平糖を配っている
いつも親切な大人には子どもたちには内緒のマロングラッセを
それが0時からの本当のハロウィンの招待状。
ケーキのお城、ビスケットの給仕たちがお出迎え
サンドリヨンは、まだ子どもだから0時からの大人たちの時間は知らないんだったね。
人間たちのハロウィンはね……サンドリヨン。
紐ギリギリに調節しあうチキンバンジージャンプ
レールが時々途切れているジェットコースター
回転速度が急に変わる観覧車
馬を乗せて魔女たちが回る回転魔女
そんなアトラクションたちが待っている。
電球ビスケット
パンプキンソーダカクテル
芋のミートパイを食べ歩きながら
それぞれ恐ろしいモンスターである本当の姿を見せ合って街を練り歩く。
お菓子を渡さないと悪戯されてしまうんだよ?
私たちの0時からのハロウィンはね
集まった大人たちがケーキのお城の中で
今年も無事だったことに感謝と来年への平穏を祈りつつ
みんなで持ち寄った木苺のタルトやブルーベリーティーを食べながら
会話を楽しんだり賛美歌を歌ったりして朝日を待つんだ。
この楽しさが分かるのは、きっと大人になってからだよ……サンドリヨン。