解放 津田古星
オカリナに息を吹き込むと
陶器に伝わる震えを
穴を塞いだ指先が感じる
音は振動
物質も振動だという
では、魂も振動だろうか
私は死んだらあなたに会えると
若い頃から信じていた
魂が一瞬でも響き合ったのだから
肉体を離れた時には
私はあなたの魂を見つけるはず
あなたが二十歳の私を見つけたように
でも私たちは全く違う世界に
生きていたのかもしれない
私が見ていた世界は
私の脳が見せた幻想でしかない
私があなたの前から去った時の気持ちを
あなたは知ることもなく
あなたの人生を生きてきた
あなたは私のふるさとを見ることもなく
一生を終える
私はあなたのふるさとの海の青さを知っている
あなたの歩いた道が平坦ではなかったこと
それでも真摯に生きただろうことを想像できる
そして、あなたが私の思いを横に退けた
その理由を知ることもなく
私も一生を終える
あなたは今日まで生き 家庭も築いた
あなたの健康と幸せを願ったのだから
私の祈りは届いたと言える
だからもう会えなくても
互いの人生に
おめでとうと言って手を振ろう
軽やかなメロディーに乗せて