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スレッドNo.4658

岬にて  上田一眞

 ♫時には母のない子のように  *1

カルメン・マキの歌声が
耳に響く

異郷の空
小糠雨がそぼ降るなか
とぼろ とぼろ と
岬の浜辺をひとり歩いた

砂に残った一筋の足跡が雨に濡れる
雨音はない

 ♫母のない子になったなら
 誰にも愛を語れない

天涯に去った母の
受難を噛みしめ
あなたの息子はここにいますと
涙雨に濡れながら
手を伸ばす

届かぬわが手
わが想い
母は遠きところへ行き賜う

   あなたの元へ
      行きたいのに
   あなたへの愛を
      語りたいのに

雨粒が次第に重くなり
砂地に 深く突き刺さる

無言の雨に峻拒され
ずぶ濡れになりながら 岬にて   
滴る雨を 振り払う

渦巻く想念
母の声を思い出せぬまま
偲ぶ歌を 口ずさむ  

 ♫時には母のない子のように
 大きな声で 叫んでみたい




*1 時には母のない子のように 寺山修司作

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