暗転 秋乃 夕陽
夜中の二時前
布団の上で俯きながら枕に頬杖ついて上半身浮かせ
スマホのワードアプリから今この詩を打っている
頭の左隅っこがジンと響いて痛い
なぜこうなったのか
これからこの痛みについてどう対処すれば良いのか
わからぬまま文字を打ち続ける
とたんにガタンと眠気が襲う
天幕が降りて晦冥が視界を覆った
ガヤガヤと人の囁きや物音と共に視界が開けた
眩しいほどの輝きと共に突如舞台が現れ
ヨーロッパの街中を再現したセットを背に
人々が楽しそうに踊り歌っている
(芝居の途中で眠ってしまったのか)
役者たちは皆生き生きと笑顔を浮かべ
誰もが手を取り合いながら
高らかに生きることの喜びを力強く謳う
その圧倒的な力は点すら揺るがすほどだ
私は半ばその代え難い力に魅了され酔いしれる
突如壁が剥がれ落ちるように場面は変わり
爆音と銃声が耳を劈いた
建物は崩壊し人は血塗れで倒れ
女性は悲惨な表情で泣き叫んでいる
私は何が起こったのかわからず混乱しながら
辺りを見回した
目に留まったのは白い土壁の民家の前で
他民族の兵士が民衆に銃を向け
耳を劈くような銃声と共に
悲鳴を上げる民衆の目の前で土煙が上がった
兵士と同じ民族の入植者の男たちが
兵士の物陰に隠れながら
不気味な笑みを顔に貼り付けながら眺めている
これは地獄だ
この世のものとも思えないほどの悪夢が
繰り広げられている
私はずんとさらに重苦しくなった頭を抱えながら
俯いた
俯いた先の地面は白くひび割れて
もはや土なのか砂なのかわからないほど
乾き切っている
歯を食いしばりながらぎゅっと目を瞑ると
再び冥闇に覆われた
私は柔らかい布団の上で
枕を土台にして俯き加減に頬杖をついていた
どうやらいつの間にか眠り込んでしまったようだ
あまりの惨状を目の当たりにしたばかりに
ホッと胸を撫で下ろす
心なしか心臓がどっどっどっと激しく鼓動している
夢でありながら急激な場面転換と
あまりにもリアルで生々しい状態に
心身ともに疲れ切ってしまっているようだ
私は大きく息を吐きながら寝返りを打ち
スマホを枕の横へ裏向きに置きながら
苦しみ喘ぐ民衆の身を按じた
遠くから微かに響くサイレンの音を耳にしながら