姓 津田古星
結婚前の旧姓が
すんなりと読んでもらえない苗字で
間違えて読まれたり書かれたり
26歳で夫の姓になったら
今度は漢字一文字になって
音読みで読むところを
訓読みで読まれたりして
その上 電話で名告ると必ず聞き返されて
漢字から説明しなくてはならない
時には「日本の人?」と言われることもあり
夫は「失礼な」と怒るが
どこの国の人でもいいではないですか
こんな生活の中にいたせいか
息子が幼い頃から苗字に関心を持ち
珍しい苗字を調べたりしていた
小学校の卒業文集を読んだら
自分の姓についてからかわれた体験が書かれていた
人の名前を使ってからかうことの低劣さを
他山の石として
人を名前や容姿で判断しない中学生に
なりたいとあった
物事の本質を過ることなく
小学生時代を送ったのだなあと
我が子ながら感動してしまった
名前は自分と他の人を
区別する記号に過ぎない
名前には意味と願いが
込められているとは言え
夫のように自分の姓や先祖に
誇りを持つ気持ちが強過ぎれば
自分が日本人ではないと思われると
不快に感じてしまう
そこに偏見が潜んではいないか
私は何も考えずに 夫の姓を名乗って
拘らないつもりでいたが
今でも高校時代の友人が一人だけ
私を旧姓で呼んでくれて
それがなぜだか嬉しい
学校や職場で認められ、愛されていた自分を
思い出せるからだろうか