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スレッドNo.4711

感想と評 10/18~10/21 ご投稿分 三浦志郎 10/27

1 津田古星さん 「姓」 10/18

姓というのは奥深く話題の尽きないもので、面白いモチーフです。目のつけどころがいいですね。
それがひとつ。次に自分という具体性を挙げて、そこから詩世界を広げてゆく。まず初連は興味深いという意味で面白いのです。
どちらも両極端ながら、すんなりと読んでもらえないという点で一致する。2連はお子さんを交えたエピソード。しっかりしたお子さんで実に頼もしい。軽く指摘すると「他山の石」です。ここは実際お子さんが言ったと取れなくもない。小学生はまだ言わないでしょう。気にする人は気にするかもしれない。念の為「世間でいう いわゆる”他山の石“の感覚で」みたいにするか、あるいは、
ここだけお子さんの生なセリフ調で「  」で表現しても、変化がついて面白いかも?僕は割と使ったりします。軽い参考程度に。
そして深いのはやはり3連。4行目までは名前の持つ両面性が語られ、5行目から9行目はひとひねりある考え方で、はっとさせられます。なぜならば、僕もそういう人間だからです。誰もが行き当たるテーマであり、それを実体験と思考で立体的に仕上げています。これは間違いなく佳作。どうぞ、両方の姓を大事にして頂きたいと思います。誇りと感謝と責任を。両方の姓を聞きたい気がしますが、それはこらえておきます(笑)。


2 上田一眞さん 「ひとり旅」 10/19

またまた地図を観ながら楽しみました。福井と石川の県境を越えたのですね。途中、大聖寺がありました。小松。歴史と工業と空港の街ですね。詩の読みどころはやはり北陸の風景描写にありそうです。荒涼たる烈風、単色で粗削りな風景。それだけに鋭く磨かれる。「日本なのだろうか」は頷ける気もします。幼い頃から聞いていた満州あたりをイメージしたのかもしれません。「時をとり崩すこころの砂時計」―どこか風景に見合った詩情があります。「この地に生を得ていたなら/どんな人生を歩むのだろう」―ここですけど、旅人はけっこうそう思うものですが、この風景の中では、よけい響くものがありますねえ。父上の企図が面白いです。「可愛い子には旅~」だったのでしょう。この詩の真価は風景の屹立と終わりを飾った詩の優しさ、その際立った対照の中にありそうです。
佳作を。

アフターアワーズ。
上田さんに触発されて私事を。僕が初めてひとり旅をしたのは高校1年の時でした。
関ケ原~長浜~佐和山~彦根に行きました。お寺に泊まったことがありました(もちろん予約して)。夕食前に住職さんの長い法話があって、まいった、まいった。ところが食事はめっぽう旨かったのは今でも憶えています。


3 秋乃 夕陽さん 「挨拶」 10/19

コンパクトさに応じて、情景や主題を絞り込んでいるのがいいです。詩とはそういったものでしょう。
逆に素材を絞って書いたら、結果としてこのサイズになった感じでしょうか。そこには「何も足さない、何も引かない」そんな感覚がありそうで、凄く良いと思います。JUSTのフィーリングです。
そういったフレーム以上に良いのはその中身です。1連、2連は何も言う事がありません。割とありがち、誰もが体験しやすい事態を美しい詩情に置き換えている、翻訳している。1連の2、3行目の書き方、2連の視覚に加えての皮膚感覚が代表になるでしょう。大変失礼ながら過去作では(詩情不足?)の感が散見されましたが、前作くらいから、プラスα的な詩情が加わって、良い方向に向かっています。この調子で、それをキープしてください。あと、タイトルを「朝の~」とか「光~」等にせず「挨拶」。これもセンス、これも詩性。佳作です。


4 埼玉のさっちゃんさん 「20分間の自由時間」 10/19

始発ですか。大変ですね。この詩も一定時間、一定位置を掘り下げた形を取っています。場面の切り取り映像を感じます。不特定多数がいろいろな所作をするわけです。それを眺めてさっちゃんさん、ラジオを聴きながら人々を観察する。そうしながら普遍を思い、自分を思っています。自由時間、準備体操といった捉え方は面白いです。そう、ラジオって意外と面白いんです。音楽と話が聴ける。映像がない分、本を読んでるのに似ている。僕も割と聴きます。人それぞれ乗車時間は違う中にあって、さっちゃんさんは20分乗るといった意味のタイトルでしょう。ただ前半に「各々で/20分間」とあるので、ここはちょっと不思議に思うのですが―。ここは少し換えたほうがいいかもしれないです。あと、もう少し詩情的な表現は欲しいですね。佳作一歩前で。

アフターアワーズ。
僕も始発は4年間ほど乗ったことがあります。あれは面白いもので、習慣的に乗る位置が決まっているので、大体、いつも知った顔がいますね。他の人もそう思ってたでしょうね(笑)。調べると、埼玉県内を走る路線は全部で36路線あるそうです。


5 詩詠犬さん 「あさひ」 10/20

あさひを主人公にしているのがいいです。一種の擬人化の効果が利いています。初連2行目で、早くもこの詩の方向性が決定づけられた心地がします。あさひの”態度や行動“も細かく丁寧に書き込まれていますね。そこから詩情が醸し出されています。かもくでありながらあさひは輝きうたっている。このあたりが詩情の在り処です。このアプローチの仕方には魅かれるものがあります。あさひが主人公である一方で、この詩には常に「わたし」の存在が消えることなく持続されます。その相互関係がいいのです。それを証明するような終わり2行です。秋乃さん同様、詩詠犬さんも、この1作により、何かふっ切れたような印象を持ちました。このフィーリングを維持してください。これは佳作です。


6 静間安夫さん 「ターミナル」 10/20

先ずはイントロとしてのターミナルでの人間群像です。会話で始まっているのが目を惹きます。
そして、おもむろに入る語り。物を語る上での順当にして効果的かつ印象的な手法が用いられています。これに近い事件があったのでしょうね。よほど小柄な老女でしょうね。彼女が発見されるまでの語りの手順がよくわかります。「遺体を基に~」以降がこの詩のクライマックスです。遺体への静間さんの思いと遺体自身の願いが交錯し、悲しみのトーンの中でも感動があります。「早く引き取り手の許に還してあげたい」そのことが実に細やかに、思いを込めて綴られています。
終連は、ただ涙、涙……。意義深いと同時に静間さんの優しさが発想させた名句と言えるでしょう。会話に始まり会話に終わるのもなかなかの発想、構成です。佳作になります。


7 じじいじじいさん 「キレイって?」 10/20

はい、今回もいいと思います。本作は創作と思われますが、恐ろしくパターン化して書いてしまうと。

〇 いじめられそうな子がいじめられず友だち良好
〇 いじめられそうにない子が逆になかまはずれ

これがポイントになりそうです。
多分、前者は「デブ」を素直に受け入れ気さくなのでしょう。あくまで明るく誰とでも打ち解ける。
一方、後者はキレイを自慢しお高くとまっていると思われているのでしょう。

この提示は人間の受け入れ方において、明らかに姿形ではなく気持ちのことを表しています。
そして、この場合、どちらが好まれるかはおのずと明らかです。この詩はその事を言っています。
やや”つくり感“はありますが、現実にありそうなのも事実です。ママの気づかせ方も柔らかくていいものですね。僕はこのふとった女の子が好きになりましたよ。
ところで、詩行が異様に長いところがあります。これ、キリのいいところで二つ折りにしてください。
詩は小説と違い見た目、スタイルも大事です。―と僕は思っています。佳作半歩前で。

アフターアワーズ。
僕の場合ですが、WORDで横書きで書いて、縦書変換して必ずスタイルをチャックします。
本末転倒気味ですが、スタイルが良くないと詩行を変えることもあります。スタイルを見るには縦書の方がいい気がします。


8 ベルさん 「似顔絵」 10/21

これは“あまり、それとは気づかせないように書かれた”恋愛詩という気がしてます。
なぜならば、詩中、常に「僕⇔君」が関わって、その気持ちは「遠回りでも」恋愛付近を描いているように思えるからです。ただ、中盤、二人の状態―うまくいっているのか、それとも分かれる直前なのかーが今ひとつ見えてこないところがあります。おそらく終連が最もクライマックスで言いたいところであり、二人の消息も見えやすい部分でしょうか。
「未来/もう一度僕らが/顔を合わせる機会が訪れたなら」―ここがキーワードだと思う。
この「なら」という仮定から逆算して現在を考えると「現在=別れ」になります。そこで僕は次のように想像しました。

現在の(たとえば)20代。だが、ゆえあって別々に生きた。60~70代になって、もしもふと出会った時、もう好き・嫌いや愛や憎しみなどを超越して時間の長さ・重さだけがある。そういったものを、ベルさんは「顔のしわ一本いっぽん」やその時の「似顔絵」に託したのではないか。この詩の全体像を把握し味わう上で、中盤―4連、5連の表現の仕方がわずかに足を引っ張っているように思えたのです。佳作一歩前で。


9 桜塚ひささん 「野朝顔」 10/21 初めてのかたなので今回は感想のみ書きます。

よろしくお願いします。野朝顔を、一日を費やして眼で見て細かく観察し飽きることがない。そんな眼差しが伝わってくる作品です。この花の特色はほぼ漏れなく表されている気がします。強さ、大きさ、長さ、生命力などですね。「詩図鑑」といった趣きありです。そんな中にあって「人間の無限の欲望」「森はまるで青い滝」「心の弱い人に生きる力をくれる」「起床ラッパ~消灯ラッパ」などが光ります。とりわけ「花の本当の心だ」あたりが結論でしょう。詩はしだいに優しくなって終連を迎えています。穏やかに終わります。また書いてみてください。


評のおわりに。

〇 Kazu.さんの新聞記事を拝読しました。文中「やれるなら、またやりたい」とありました。
この事は大台の10冊目詩集にあたるでしょう。僕はそれを期待しています。
「あせらず、ゆっくりと」の言葉も添えながら―。

〇 日米、選挙、野球、今回共に興味深し。
僕は野球がよくわからないんですが、昨日たまたま見ていたら、DeNAのジャクソンという投手。
ふてぶてしいほどの髭と長髪の束ね方、一発で好きになりました(なんのこっちゃ!?)
では、また。

編集・削除(編集済: 2024年10月27日 19:57)

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