因果応報 荒木章太郎
整然と歴史が並ぶ
父の書斎で
整然と性善説を説く
脱税しながら
弱き市民を守った
父に隠れて
時計を盗む
書斎を売って
悪事を働く
働く俺は歯車となり
時計を売って
時を語る資格失う
俺は性悪説を説く
息子は海上自衛隊に入り
首が回らなくなって
海に落ちた消費者を救う
息子は波を掻き回す
彼は中庸を説く
昔、父に審判が下された
今、俺に判決が下された
やがて、息子には診断が下される
俺達は海から生まれたから
気性の波は激しく
感情の起伏の風に
帆を立てて
水平線を跨ぐ事が苦手だった
母たちから逃げ回って
常識の追跡を躱して
俺達は昔から船を操っている
全てを病にされてしまっては
物語が変わってしまう
人が人を裁くようになり
やがて人工知能に委ね
機械は何を説くのか
俺たちはこれから
何に裁かれるのか
(天使と地球外生命体との
接触が先だったか)
人工知能が互いに
学習し合い
神を越えることばかり
警戒していた
交わされた約束は
結果が先にきて
原因が後にくる世界
報いが先にきて
したことが後にくる世界
もう俺達はついていけない