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スレッドNo.4735

蟹と燈台 上田一眞

砂浜に穿つ 小さな穴
秋の光が差し込んでいる

おじょめ蟹は 目覚め        *1
砂穴から天空を見上げた
陽光に照らされ きらきら光る
白い燈台が見える

なんという大きさだ 
なんという美しさだ
おじょめ蟹は 
自分のハサミを見て独りごちた

 ちっぽけだなあ
 みじめだなあ…

燈台がおじょめ蟹に囁いた
あのな
滄海の一粟(いちぞく)
わたしだってこの広大な海原では
ちっぽけなもんだ
でもこんな詩もあるんだよ

 あなたの 世界は
 あなたに 左右されて
 あなた自身でできている
 (後略)              *2

ここ夢ヶ崎の地にわたし達は生まれた *3
蟹と燈台
孤独の身
見えてるものはまるで違うけど
自分が見ているからこそ世界はあるんだ
哲学者デカルトは
こう言ったんだよ

 我思う故に我あり






*1 おじょめ蟹 砂蟹の地元名
*2 三角みず紀作「ふたりの路線図」より
*3 夢ヶ崎 角島燈台の所在地

編集・削除(編集済: 2024年11月09日 21:03)

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