一次関数 人と庸
辺AB、辺CDが2cm、辺AD、辺BCが4cmの長方形ABCDがある。
点PはAを出発して、毎秒1cmの速さで長方形の周上をBを通ってCまで動く。
また、点QはBを出発して、毎秒2cmの速さで長方形の周上をC、D、Aを通ってBにもどる。
点P、Qが同時に出発してx秒後の△APQの面積をyⅽⅿ²とする。
xの変域が3≦x≦5のとき、yをxの式で表せ。
「走ってくるわ」と言って
君は夜の道にとび出した
君は点Pになって
今日も問題集の縁をなぞっていた
自分より少し速い点Qと
動かないAとでつくる三角形が
どんなものになるのかなんて
さして興味はなかった
だから
角っこについた折り目につまずいたりすると
長方形は破れて
外で吹いていた風が
一気に流れ込んでくる
視覚や聴覚を刺激する
とてつもない量の情報
これ以上走り続けなくても
すべてうまくいくという
砂糖菓子のように甘く怠惰な空想
刺さったそげのような罪悪感と一緒に
ひとしきり味わったあとに待っていたのは
止まったままの計算式と
思ったより進んだ時計の針
だから君は走り出した
もう一度点Pになって
大人が舗装したかたい道に足が痛むが
土がむき出しの山道に入る勇気もない
「結果」とは
どんなかたちをしているんだろう
焦りも 怒りも 諦念も
「君」を構成する辺のひとつひとつだ
(たとえそれが
どんなにいびつなかたちであろうとも)
点Pと
少し速い点Qと
動かないAとでつくる三角形は
今日も世界のそこかしこで
絶えず変化し続けている
君は今
どこら辺を走っているんだろう
x秒後の未来では
どんな三角形が描かれるんだろう