獄中の虚 白猫の夜
月の消えゆくある日の晩に
うすらと引いた赤い線
猫の所為にした自傷の痕に
気が付く者はおりますまい
要らぬ存ぜぬ消えゆけと
狂気のままに放られた刃を
私は正気で受け取った
消えゆきましょう 月の夜に
拾うてくれる 暗闇に
かなぐり捨ててしまって 全て
持ってゆくのは安吾の桜
なんて痛快 晴晴と
明くる夜の向こう側
大きな鎌を傾げた亡者が
私の首に刃を当てる
月の消えゆくある日の朝に
切り落としたのは誰かの首
開きっぱなしの窓の奥から
覗くふたつのまろい金色
次いで聞こゆる悲鳴と怒声
野次とざわめき サイレンと
儚く消えゆく私を笑うは
桜であろうか虚であるか
私は正しくひとりだった
桜はそれを知っていた!
約2年ぶりの投稿となりました。
再び励みたいと思います、どうぞよろしくお願い致します。