揚げた衣の向こう側 荒木章太郎
このいまいましき
古めかしい衣よ
恥ずかしさというブランド
値引きされたプライド
脱ぐことが出来れば
今からでも
日常茶飯事の中で
何気ない一編のうたから
書物や経験から
学ぶことができる
そして脱ぎ去ったら、
価値が上がればまた纏えば良い
ある日、お前は「てんぷらだ」と
言われた
怒ることなかれ
老いの衣、善の衣
他人を衣で判断するその声も
所詮また一つの衣
たまに偉そうに
目の前で揚げて貰う
天婦羅屋で食べる
身に付けた衣を脱いで
「旨い」
俺も、真の自分を揚げて貰い
人に味わってもらいたい
そのための謙虚さ——
へりくだるのではなく、
本来の姿で生きるために