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スレッドNo.4811

水兵ソデビーム氏の愛  松本福広

水兵ソデビーム氏は
今日もその勤めに粛々と励んでいる
アスファルトグレーの海原が広がる
彼の担当する区域は
船の行き来が絶えない場所にある

船に乗った小人たち
一人一人の顔をうかがいしることはできない
船首とマストが強く自己主張している
没個性で人間がそこに描かれていない
ソデビーム氏は休みなく立ち続けながら
そんな船たちを眠らず見送っている

何もないことが多い
何もなければいい
自分はここにいるだけでいいのだ
何もないことを祈り
そこに立ち 見守り続ける

人からは名前を忘れられ
人からは目的を忘れられ
感謝の言葉などかけられることもなく
それでも立ち続ける
勤めとはそういうものかもしれない

有事の際に 彼は「守る」ために立つ
暴れ狂った船を受け止める役として
暴れ狂った船が人を傷つけないように
暴れ狂った船の中の小人をより傷つかないように
誰かを被害者にも 加害者にも
これ以上させないために我が身を犠牲にする


彼は知っている
起こってしまったことは取り消せないのだと
小人たちは仲間同士で花をみせあう
アスファルトグレーの海が
太陽にせせらぎ光に満ちた日には
彼だって 彼等だって 小人だって
同じように目を細める

鉄面皮の下で何よりも敬虔に愛を信じているのだ
酷暑にも 厳寒にも 耐えて
彼がそこにいるのは
彼の務めであり、愛であり、信仰に他ならない

※ 本来、ここまで書かない方がいいとは思いますが、評がしやすいよう明記しておきます。
袖ビーム……ガードレールの画像に乗せた丸くカーブした部分です。

編集・削除(編集済: 2024年11月20日 09:59)

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