新生 温泉郷
四方の壁に囚われた
暗闇の中で
私はまず希望をまさぐった
希望は壁の外にあるはずだった
声は聞こえてこなかった
私は壁を穿とうとした
道具は歯と爪しかなかった
いや もう一つ
頭蓋があった
だが
血の匂いを
嗅いだだけだった
慣れてきた目で
私は壁の模様を凝視した
凝視しても壁は動かなかった
でも私は
凝視を止めなかった
やがて
私は自責を友とした
私は自責の陶酔を楽しんだ
やがて
私は絶望を友とした
私は絶望の静寂を受け入れた
やがて
壁の模様がゆらめき始めた
壁の模様に色彩が現れた
色彩は空間を伴い始めた
空間の奥には誰かがいた
私はその誰かを凝視した
それは
自分だった
私は自分を友とした
誰かが壁の外で
何かを叫んでいるような気がした
その声は次第に
大きく聞こえてくるようだった
壁の色彩は懐かしい音楽を伴い
損なわれた私の身体に
肉をつけてくれるようだった
壁が突然壊れる音がした
風が聞こえ 声が響いた
その声は「サイシンカイシケッテイ」と聞こえた
私の眼は すでに視力を失い
光をおぼろに感じただけだった
何か 固いものが舞い降りてきた
壊れた壁は
私の壁ではなかった