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スレッドNo.486

物語 喜太郎

大空は悪意に満ち溢れている

いつからだろう

青空を知らない子供たちが育つ

この村も曇天が空を覆い

悲しみと憎しみの中にある

子供たちは昔話で

長から青空を聞く

やがて一人の旅人が来て

村の丘に立つ

大地に片膝をつき

しっかりと大地と一つになる

左手に持った大きな弓に

錆びた鉄の矢をあてがい

上半身に渾身の力を込める

鉄の矢を徐々に天空に向けて引くと

弓がギリギリと鳴き始める

両腕に隆起し始める紅い筋肉と太い血管

弓は限界まで引かれた

男の強い眼差しは

天空の一点から離れない

やがて僅かに震える両手の筋肉と弓矢が

止まる

訝しげに集まった村人たちの中に

緊張と静寂が広がる瞬間

まるで石像のような弓を構える男から

弓が大きく鳴き響いた

風を切る音と共に

矢は天空に向かい

一筋の金色の光となる

曇天に消えた金色の光の点

空を見つめる子供たちの瞳に

青空が徐々に広がる

男は立ち上がり歩き出す

次の矢を射る場所を求めて

そして長は誓う

もう二度と悪意に満ちた空にはしないことと

子供たちに語り継ぐことを

やがて物語となり語り継がれてゆく

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