空転するパレード 佐々木礫
静かなオフィス街を抜け
住宅街を歩く二十二時
今夜の街灯の射影は
電柱の裏側より注ぐ
青い達磨の熱視線
いつか鞄に付けて歩いた
女に貰ったキーホルダー
今はただ寒々とした恐怖
近頃の僕は
まるで踊りを忘れたダンサー
一人暮らしの玄関ドア
開ければ鳴り出すクラッカー
今日もどこかで祝い事
例えば砂漠の処刑場
例えば赤子の眠る街
喜ばしい終わりの予感
広すぎる十畳のリビング
その端の窓際に置かれた
場違いな安楽椅子に座る
網戸の奥から冷気が差す
そこは寂寥の玉座の間
大きな目をした王子様
退屈しのぎに座るのは
バルコニーの電気椅子
視線の先には祝祭の街
空転するパレード
象は空気階段を上る
街の広場の時計台
正体不明の華麗なピエロ
秒針にベルトを巻き付けて
酷く笑顔な首吊りピエロ
その後も決して目を覚まさず