笑えていなかったけど まるまる
思いがけず 息子から
「人生 負け組のくせに」
面と向かってはいなくて
私は テーブルを拭くかなにかしていた
悲しくはなかった
そう映ってるのか
なんか おかしかった
強がりではなかった と思う
いわゆる「勝ち組」には なれなかったな
かなり前から思っていて
正確には
まだなれていないな とか
最後は勝つのに
気づかれていないな とか
気づかれないのは当たり前で
出身校は無名だし
おしゃれなお母さん達とは 滑らかに過ごせない
息子には うとましがられて
私が喋るとテレビの音量を上げてくる
料理なんかも得意ではなく
割といつも あくせく
贅沢をすることさえ いつしか苦手になっちゃった
でもね めげてない
折り合いは ついてる
遠く離れて暮らす娘は
好い人に出会えたようで
テレビの音を上げる息子は
熱で私が寝込んだ日だけは
皿を洗ってくれた
高価な化粧品を買う気はしないが
育てたアロエで化粧水を作れる
肌のたるみが気にならないのは
さては ちょうど良いのができている
しめしめ
考えながら 二ヤけてきた
足りないものなんて ないじゃん
あ
ニヤけた頬に 手を当てる
頬を上げたなんて どのくらいぶりだろう
笑えていなかったな ずっと
原因はたぶん 夫
口に出しては言えないけど
心の扉を
開けなくなってきている
あまりによろしくないと思えて
ついこの間 話して決めた
おはようとただいまくらい 声に出そうと
笑うことを忘れた家では
満たされたように 幸せそうには
見えないんだね
お父さんとお母さんの
仲の良いのは一番の安心 なのに
手渡せなくなっている
ごめん
どうしよう
素直になればあちこちで見つかる
喜びの 小さな小さな一粒
そういうの食べちゃえたらいいのに
栄養にすることができたら
また 笑えるかな
わざとらしくならないように
ほんの少しずつ
負け組なのに
何がそんなに楽しいんだよって
息子が面白がったりして
そう ならないかな
いつでも 笑っちゃってさ
全部ぜんぶ なんでも笑って
うんとうんと うんと遠くへ
笑い飛ばしちゃえるとしたら
そしたら すごくいいな
できるかな