マヨネーズ工場 松本福広
学校の社会科見学でマヨネーズ工場を訪問した。
テレビで見たパン工場と違って人が少なかった。テレビで見たパン工場は季節毎に商品をリニューアルして変更が多い。
その細かい調整は機械では難しく自動化に至れないそうだ。だから工程を細かく分けて人力で対応するそうだ。
ラインには色々な役割の人がいた。
フルーツを乗せる人。ホイップをチョンチョンとつける人。板チョコを乗せる人。ケーキを箱詰めする人。パレットに積まれたケーキの箱を冷凍室に搬送する人。
彼らは髪の毛などの異物混入を防ぐため頭から足の先まで決められた作業服を着こんでいる。
お互いのことは目と名札でしか分からない。そんな彼らが黙々と作業をしている光景が印象的だった。
対してマヨネーズ工場は工程が自動化されているから人手が少ないのだと案内する人が話してくれた。
弊社のマヨネーズは卵の黄身だけを使っています。と自社商品の特徴を話した後、そのために独自開発したという機械を見せてくれた。
一分間に鶏卵を六百個割るという割卵機だった。
人が卵を割るときの動作と同じ動き機械が再現する。
卵を固定する。殻をナイフで割れ目を入れ機械が殻を左右に割る。下にある器が卵白と卵黄を分ける。そのような案内を受けた。
ところが、その割卵機には目を丸くする光景が広がっていた。
割られた卵からは小人が出てきたからだ。
社長の奥さんの小人が出ていた。
次から次へと卵から小人が生まれていた。
割卵機の部品メーカー営業のタナカさん
産業廃棄物センター受付のムラタさん
食品ロスを受け入れている養豚場のミネさん
総務の新入社員のタカムラさん
そこにいると当たり前になっているけど
そこを構成する最小の人々の卵がなければ
何も作れないのかもしれない。
一分間に割られる卵に次々と関係する小人らが生み出されていく。
取引先の養鶏場の皆さん、その家族と鶏も生まれている。
自分のことに精一杯でそうしないと生きられない。
自分の生活に様々なものがあって、そこに関わる人らを忘れて
ワタシという制服を着て一人で生きている顔を作っている。