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スレッドNo.497

ヘビ石  Osada


臥龍橋の手摺りにもたれて
潮の引いた川を眺めていた

背後は車が行き交う国道二号線
露出した川床の泥土が黒く光っている
前方の河口までは1㎞もない

橋の名前からは
龍が臥している姿を想像する
しかし龍に見立てたにしては
この橋は小さいし短過ぎる
龍は何処かこの近くで
のんびり寝ているのかも知れない
なんてことを想いながら
川の中央に目をやる

痩せ細った河水の流れを縦に二分して
川床に石積み造りの導流提が横たわり
ゆったりとカーブを描きながら
ずっと先の河口まで伸びて行く

その細長い形から
地元の人はヘビ石と呼んでいる
江戸時代からの遺構だ

でも ちょっと待てよ
あれはヘビではなくて
龍の尻尾じゃないか?

黒灰色の石の一つ一つが龍のウロコだ
ハトやカラスやコサギが舞い降りて
あちこちで餌をつついている

江戸時代どころではない
遥かな過去の神話時代
龍は山の方に顔を向けて眠りに就いたが
何千年も何万年も動かずにいたら
頭や胴体や四肢は風化して崩れ
川から海へと流れ去り
河口近くの尻尾だけが残ったのだ

たとえ形骸は無くなっても
龍の魂は変わらずまだそこに在るのに
うかうか寝ているうちに
ヘビに格下げになってしまった

耳をじっと澄ましてみよう
国道を行き交う車の騒音に混じって
微かに聴こえて来ないか?

臥龍の寝言が


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*臥龍橋(ガリュウバシ)

編集・削除(編集済: 2022年08月18日 18:27)

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