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スレッドNo.4976

2024年12月24日~12月26日 ご投稿分、評と感想です。  (青島江里)

◎2024年12月24日~12月26日 ご投稿分、評と感想です。


☆あの人のように  佐々木礫さん

十三歳から十八歳までの男女の出会い。振り返って綴ってくれた記憶。読後、結構辛かったことを乗り越えて今にいらっしゃるのだと感じました。

人生何十年とする中での五年間ほどの歳月は、数字的にはわずかな時間のように思いますが、いわゆる子供から大人への過渡期とされるこの年代は、かなり濃密な人間の成長期なのだと作品から感じることができました。

恋愛は、成就するかしないか、両想い、失恋の二択のみが答えのように捉えられがちですが、こちらの作品を拝読していると、改めて、成就するという言葉は、本人が、その時々に出会った人に何を学ぶことができたのかと、自身で思えるところにあるのだと感じました。恋愛に限らす、人間関係というのは、結構複雑で何歳になっても悩んだりする人も多いと思います。もしも困った時、恋愛とは関係なくても、例えばこの作中の五年間の体験から、人間関係について乗り切ることのできるヒントが見つかることができるかもしれない。そのようなことも感じさせてくれました。

孤独になりたくない。一人になりたい。通じ合いたい。すれ違い。色々な感情が渦巻いていますよね。生きていくということは。

個人的に、詩も生活の一線上にあるのだと思っていますが、誰もが皆、自身の生活を言葉にして表現するということに巡り合えるわけではないですよね。胸の中にあることを自分なりに、書きたいと思う方向に向かって綴ることができる……自分と向かい合うことができ、書き残したことが、将来の自分になんらかの道しるべを与えてくれるかもしれない……。そんなことをこの作品は思わせてくれました。詩を書くことに巡り合えるって、小さな奇跡でもあるのかな。そんな気持ちにもさせてくれる作品でした。



☆君ときどき僕  ふわり座さん

相手を愛おしく思う気持ちで溢れている作品。恋愛感情のアップサイドダウンを感じさせてくれる詩行もありました。自分の話ばかりにならないように、相手を気遣うという一行からは、臆病な気持ちや、迷いを感じさせてくれました。大きな気持ちから細やかな気持ちまで、さまざまな恋愛感情を表してくれているのがこの作品の長所だと思いました。

気になった点は、オープニングの一連目です。

二人階段登って転がり落ちた
心の中は解けて大空いっぱいに
シャボン玉飛ばして一つ一つ割れてゆくけど
二人はいつまでも壊れたりしない

「二人階段登って転がり落ちた」だけ見ていると、一行目ということがかなり影響しているのだと思いますが、個人的には、リアルに階段を転がり落ちたように思えてしまうのです。次の「大空いっぱい」「シャボン玉」というワードから、心の中の世界の投影?と、なんとなく思うことができるのですが、仮に一行目でリアルな風景だと思い込んだままの人がいたら、次のシャボン玉を飛ばしている行を見て「階段から転げ落ちたのに、いきなりシャボン玉を飛ばしている?」となってしまい、情景の整理がつかなくなる可能性がありそうです。リアルとそうでない世界がわかりやすくなるような言葉や表現をあと少し埋め合わせすることが必要なのかなと思いました。或いは一行目をリアルだと思わせないような表現、リアルなようで実はそうでない世界と思えるような独自の表現を考えてみる必要もあるのかなとも思いました。

君ときどき僕 二人の関係はそんな感じだ
それは今年初めての雪の日だった

こちらの表現は、この作品の中で一番、印象に残りました。心模様を天気にたとえているところ。君は太陽で、僕は曇り空の雲のように受け取ることもできるように思いました。恋愛の一喜一憂を感じさせてくれる表現でした。それだけではなく、その表現に実際の天気の様子を続けたところが独自の表現を息づかせているようにも思いました。

初めての雪の日→初恋のような真っ白な雪のような感情、或いはそのもの。ずっと忘れられないような純粋な思い出になりそうな一日……そのような思いがこちらには伝わってきました。今回は佳作一歩手前で。


☆ふくらむすふれ  松本福広さん

とてもやわらか。とてもふかふか。そんな雰囲気が作品全体に広がっていました。それは雰囲気だけではなく、実際にあるものの手触りも同じように感じさせてくれました。

こちらの作品、全部がひらがなで書かれています。子供のような純粋な気持ちを表現するひとつとして用いられているように思いましたが、個人的には拝見している途中に「読み」について、ひっかかってしまいそうというか、つまずいてしまうところがいくつかありました。この作品のやわらかな気持ちに触れるような感覚を損なうことなく、この点を解消することについて考えてみました。

結果的に辿り着いたのは、ひらがなの配分についてでした。けれど、漢字を加えることはなるべく避けたいということを考えた末、出した答えは、幾つかの部分をカタカナ変換すること、もう一つは読み迷いそうなところの間にひとマス空白を加えることでした。以下、まとめてみました。

(カタカナ変換)
◎かーてん→カーテン◎どあ→ドア◎ぱんけーき→パンケーキ◎めれんげ→メレンゲ
◎にゃお→ニャオ

(ひとマス空白加える)
◎ねこのたま→ねこ のたま(或いは、空白ひとマス無しで、ねこのタマ)◎ふくらむすふれ→ふくらむ すふれ
◎終盤にある三行の「ふくらむおなか/ふくらむあさ/ふくらむあたたかさ」のそれぞれの行のふくらむの後にひとマスの空白(ふくらむを強調するため)

私が感じたのは以上です。こちらはあくまで参考になります。詩を生み出した作者さんの気持ちが最優先です。何かのお役の一部になれば幸いです。

ラスト三行。読み手への問いかけのようにも受け取れる表現とともに、やわらかな空気が広がる余韻が同居していると感じさせてくれる、とても素敵な表現でした。読後、優しい気持ちでいっぱいになる作品。今回は佳作半歩手前で。



☆仕事納め  温泉郷さん

タイトルの「仕事納め」という単語をみて、あ~、会社の仕事納めのことについて書いている作品なのかなと、そのまま一行目に目をやりましたが、読み進めていくうち、見事に良い意味でひっくり返されました。樹木の仕事納めの作品でした。う~ん。なかなか思いつかない発想だなぁと思いました。こんな発想ができるのは、ふだんから、作者さんが自然に向けて視線を広げ、心を寄せてきるからなのだろうな……そんな風にも思いました。

作中の色合わせも美しいです。常緑樹の緑と黄色の大ぶりの花に見えたイチョウの葉、そしてバックの街灯のない夜の闇の色。ソヨゴの実の赤。絵画のような、或いは写真のような世界に浮かぶ色を、しっかりと想像させてくれました。

なかでも一番見事だと思ったのは、点字ブロックの部分です。イチョウの葉の同化する黄色。とても鋭い着目点だと思いました。そして、色だけでなく、そこだけ葉の形が崩れない理由として、そうだなぁと気づかせてもらえるところ。サラリと描かれた中に、奥深い意味を込められているところ、自然界とはまた違う、はらりと人間社会を感じさせてくれるところもよかったです。

隣人に黄色い花を贈って
今年の最後の仕事を終えた

上記の二行は、作者さん独自の感性を感じさせてくれました。ラストの一行の「イチョウはしばし冬の眠りに」は、こちらも実際に仕事納めに入る人間のことも感じさせてくれました。広がる季節感とリアルな人間社会の風を感じさせてくれる作品。佳作を。


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新しい年がやってきました。みなさま、旧年中はありがとうございました。

2025年初めての評と感想の日となりました。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

みなさまの詩生活がすこやかで充実したお年となりますように。

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