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スレッドNo.4979

初夢  上田一眞

その1

こころの内に垂鉛をおろすと
底なし沼のように深い
闇の世界
そこに棲むのは眼を失くした魚たちだけだ

盲しいた白い魚を追いながら
暗闇に内包するものを
手掴みで確かめる

 迷い 妬心 困惑
 懊悩 絶望 恐怖 
 憎悪 敵意 猜疑 
 憐憫 愛憎 苦悩 

こころの洞窟に
石ころのように転がっている
感情の山
ただ こ奴らに質量はない
薄い紙っペラ

こんな言葉に動揺する自分が
不甲斐ない  


その2

一人では
生きていくことなど出来るはずもないのに
なぜかこころは独りを志向する

妻も子も いらぬ
友とて いらぬ

私はこころの洞窟を
躓きながらも
静かに 独り歩きたい

書を捨て
ペンを折り
ただ ひたすら歩きたい

洞窟に光明を見つけることができるなら
私の
全てを捧げてよいのだ


**

微睡みのなかから
覚めたのは
夜明け前の時刻だった
まだ薄暗い

それが二つの出来の悪い〈夢〉だと
気づくのに
さしたる時間はかからなかった

令和七年
不本意だが自分らしい初夢だ

編集・削除(編集済: 2025年01月04日 09:39)

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