MENU
1,158,909

スレッドNo.4996

異臭さわぎ  荒木章太郎

近所で異臭騒ぎがあった
バイト先で知り合ったエタンは
「issue」と聞き間違えた

この町では、蓋をして
匂いごと封じ込めるのだと伝えると
ぶつかり合わなきゃ
終わらないだろうと怒っていた

「だから君の町は瓦礫の下敷きに」
そう言い返したら
彼の涙が静かに匂う

言葉の間に生まれる亀裂が
触れられない距離を作っていたのか
エッジの効いた安全神話と消毒液の臭いが
その裂け目をさらに広げたのか

思わず彼を抱き寄せた
霞がかった朧月夜に
ほのかな匂いが漂い溶ける
鋭さを持たず、ただ静かに馴染む

生まれた時から沁み込んだ
匂いと汚れを一緒に清める
なんて乱暴な風習だろう
もうエッジの効いた夜は御免だ

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top