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スレッドNo.4999

ネズミと男たち  相野零次

世界のどこかの薄汚れた倉庫。
そこでは男たちがある作業を行っていた。
男たちは二十名ほどいた。
男たちは背中に大きなかごを背負っており、かごの中は何十匹ものネズミで満杯だった。
男たちはかごを背中から床へ下すと、かごの中の一匹のネズミを捕まえ、全身を隅々まで眺めた。指で腹や背中を愛おしそうに撫でたりした。それが終わると、丁寧に床へ放逐した。
二十名ほどの男たちが同じ作業をした。男たちのかごからネズミがいなくなった。
床を何百匹ものネズミが動き回っていた。
男たちのうちの誰かがかごを背負った。他の男たちもかごを背負うと、今度は手袋をつけ、動き回るネズミを一匹ずつ捕まえ始めた。捕まえたネズミはかごに戻した。
動き回る数百匹のネズミをかごに戻すにはそれなりの労力を要するらしく、作業は何時間も続いた。男たちは汗だくになった。やがて最後の一匹を誰かが捕まえた。
すると男たちの一人がその最後の一匹を捕まえた男に拍手をした。それを皮切りに、やがて盛大な拍手となった。拍手を受けた男は照れたように笑い、かごからネズミが逃げないように、軽くお辞儀をした。
そしてそのお辞儀をした男はその場から去った。
他の男たちも、互いの労をねぎらいながら、ほうぼうへ去っていった。
一時間ほどすると、先ほど去って行った男たちとは別の、二十名ほどの男たちがやってきた。
男たちはかごを背負っており、かごはネズミで一杯であった。
そしてまたかごを床へ下すと、ネズミを一匹ずつ愛撫し、放逐しはじめた。
二十名ほどの男たちによる、同じことの繰り返しが始まった。
初めて見る顔ばかりかと思えば、先ほどの男たちの中にいたメンバーもいた。リピーターもいるのだろう。
世界のどこかの薄汚れた倉庫で、今日もまた、額に汗して男たちがネズミを追いかけている。

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