新年を聴く 温泉郷
青銅の少女
夏の装いで
石の台座に座って
目をつぶり
穏やかな微笑み
昭和の彫刻が
令和の音を聴く
片側二車線の大通り
トラックの音
バイクの音
宅配便の音
歩道の
大学生の声
サラリーマンの声
携帯電話の着信音
耐震構造の新築ビル
仕事始めの
工事の金属音
「聴く」
それが少女の名前
固定された
誰も傷付けない微笑みが
今を聴き
昔を聴き
遠くを聴く
凍ることなく
曇ることなく
閉じた目で
またやってきた
新年の音を聴く
遠くの音を聴く
「おめでとう」と
ふざけて声を掛ける
子どもの声を聴く
(注)彫刻「聴く」(富田憲二作)より