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スレッドNo.5015

橋の上の靴  樺里ゆう

十一月の雨上がり
橋の上に
男物の黒い革靴が落ちていた

泥の飛び散ったそれは
左足だけ
右側の片割れも
靴の持ち主も
あたりには見当たらない

ちょうどそのとき
橋から見渡せる西の空には
薄明光線
いわゆる「天使の梯子」がかかっていた

ああ あの靴の持ち主はきっと
うまいこと天使の梯子に掴まって
空に昇っていったんだろうな──

わたしはなぜか
そんなことを思った

それから二か月が経った今でも
あの靴は
橋の車道の隅に転がっている

誰も
迎えには 来ない

編集・削除(編集済: 2025年01月14日 20:42)

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