橋の上の靴 樺里ゆう
十一月の雨上がり
橋の上に
男物の黒い革靴が落ちていた
泥の飛び散ったそれは
左足だけ
右側の片割れも
靴の持ち主も
あたりには見当たらない
ちょうどそのとき
橋から見渡せる西の空には
薄明光線
いわゆる「天使の梯子」がかかっていた
ああ あの靴の持ち主はきっと
うまいこと天使の梯子に掴まって
空に昇っていったんだろうな──
わたしはなぜか
そんなことを思った
それから二か月が経った今でも
あの靴は
橋の車道の隅に転がっている
誰も
迎えには 来ない
十一月の雨上がり
橋の上に
男物の黒い革靴が落ちていた
泥の飛び散ったそれは
左足だけ
右側の片割れも
靴の持ち主も
あたりには見当たらない
ちょうどそのとき
橋から見渡せる西の空には
薄明光線
いわゆる「天使の梯子」がかかっていた
ああ あの靴の持ち主はきっと
うまいこと天使の梯子に掴まって
空に昇っていったんだろうな──
わたしはなぜか
そんなことを思った
それから二か月が経った今でも
あの靴は
橋の車道の隅に転がっている
誰も
迎えには 来ない