紙コップ 通信途絶 佐々木礫
青空が広がり、
風は緩やかに芝生を撫で、
円盤を追う犬が駆け回る。
木陰の下、
木漏れ日の光を反射する、
水色のレジャーシートの上で、
おにぎりを食べる家族が笑う。
公園の真ん中、
白い糸の向こう、
二人の通信が始まるのを待った。
「もしもし。あのね」
と、小さいが、彼女の声がする。
「◇◇君のこと、三番目に好き」
右耳に当てた紙コップが囁く。
僕はその声の意味を探した。
しかし見つからず、
「それは、どう受け取ればいいの?」
思った通りを、糸電話越しに問いかけた。
しばらく待てど返信が来ず、痺れを切らし、糸電話の先に目を向ける。
(公園?)
そこは夕暮れの田んぼ道、
山に沈む陽が空を染め上げ、
糸電話の糸は切れていた。
手に残された紙コップと、
たらんと伸びる白い糸に、
拡散する声、聞き手の不在。
空の受話器を握りしめ、叫ぶ。
「メーデー 、メーデー!」
世界の端々にでも響くように、
「Hello, World!」
そうして、僕は返事を待つが、
その日最後の微風が手に触れて、
空虚な紙コップにこだました。