虹蜺(こうげい) 樺里ゆう
出雲の空は よく虹がかかる
不安定な天気が多いから
一日に三度も四度も虹がかかったりする
十二月のあるとき 天気雨の中
ひときわ大きな虹がかかった
それも二つ
主虹(しゅにじ)、副虹(ふくにじ)と呼ばれる現象だ
──かつて古代中国では
虹は「虹蜺」(こうげい)と呼ばれ
身体の両端に頭を持つ 蛇に似た生き物だと考えられていたという
虹(こう)がオスで 蜺(げい)がメスだとされるが
両者をどう区別していたのかは 現在も明らかになってはいない──
大学時代に聞いた講義が
頭に浮かんだ
もしかしたら 古代中国の人たちの目には
こんなふうに二本並んで空に立つ 七色の帯が
寄り添うつがいに見えたのかもしれないな
果たしてこの思いつきが正しいのか
わたしにはもう調べようもないのだけれど
そうだったら いいな
そういうことにしておきたい 今は