魚類博士の誕生 温泉郷
大きな頭の石のネコが
石の本を読んでいる
その傍らに並ぶ
コートを着た人たち
石のネコは
石の本に目を落として
難し気な顔をしている
石のネコの固い読書
お母さんに連れられた子どもが
後ろから本を覗いてみる
見開きの左はアジのような魚の線画
右には頭と尾だけ残った骨だけの図柄
子どもは石のページを
めくろうとするけれど開けない
ああ
次のページには何があるんだろう?
どんな魚がいるんだろう?
石のネコは難しい顔で読むばかり
午前9時ちょうど
図書館が開き
子どもは手を引かれる
振り返って石のネコを見ても
石のネコは難しい顔のまま
子どもは魚類図鑑を一冊借りる
そして 図書館から飛び出して
石のネコと並んで座り
一緒に図鑑を見る
石のネコは難しい顔のままで
石のページを開いて見せた
そのページには
魚類図鑑と得意そうな子どもの顔
次のページには
魚類博士の少し難しそうな顔