毒の名はアノン 松本福広
殺意は時に無自覚に無邪気に生まれる
ある意味で人が根源的に備わっている狂気
その殺意はアノンという薬を毒へと変容させる
アノンは形なき薬である
人と人が関わる上で様々なバリアがある
それは年齢だったり性別だったりする
時にアノンはそれを越える効果をもたらす
また明日……そんな一日の終わりに温かい約束を
アノンは形がない
それは善人にも悪人にも好都合だった
形なき毒は人に投与しやすい
無味無臭である
そして、毒物を特定するのが難しい性質をもつ
アノンは即効性で拡散をみせる
そして、体内を蝕む……主に心を蝕む
抗うつ剤が脳内の神経物質に作用するように
周囲の人間に攻撃性を生み出し
投与された人間は毒によって死ぬのではない
自らその道へ選択をするよう追い詰められる
道なき道、道閉ざされた暗黒へと
アノンは周囲の攻撃性を生む
アノンの毒性は拡散する
攻撃は新しい攻撃を生む
時に社会問題となるが人々はその毒に気づかない
投与した側も姿なき毒に取り扱いを間違える
アノンに対応する術は
現在ではゾーニングが推奨されている
まずは一言 隣人に挨拶を
青空が解像度で表現できないことを忘れていたのを
思い出してほしい
※
anon(アノン)とは、「匿名の」を意味する anonymous という単語を省略したネットスラングです。
今回はその名の通り、匿名性をテーマにしたものです。