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スレッドNo.5079

屋上の砂  樺里ゆう

ある商業施設に勤めていたときの話です。

私の仕事は
店にある設備の修理や点検や清掃なんかで、
毎月晴れた日には 屋上に上がり
ルーフドレンと呼ばれる、
雨水を受ける排水口の掃除をしていました。

毎度毎度不思議に思うのですが、
ルーフドレンの周りに溜まった白い砂は
浜辺の砂にしか見えないのです。
ここは海から遠く離れた場所だというのに。

掃き集めた砂の山をちりとりで掬うとき、
私は
まるで自分が砂浜にしゃがみこんでいるかのように
錯覚していました。

もしかしたらこの砂は、
近くの学校の校庭から
風で飛ばされてきたのかもしれず、
はたまた
すぐそこの川べりから
運ばれてきたのかもしれず、
けれども私はその答えを突き止める気には
なりませんでした。

掃除を終えると、
集めた砂はいつも
敷地の隅の土手に捨てにゆきました。
この砂もやっぱり、
毎回土手から忽然と姿を消していたのです。
みんなどこへ行ったのでしょうね?

どこで生まれて、どこから来て、
そしてどこへ還ってゆくのか
結局わからないままだったけれど、
ただあの頃の私は、
それを 謎のままにしておきたかったのでした。

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