共依存 白猫の夜
俯いて歩く帰り道
あおたんまみれの左脛に
じくじく腫れた左腕
右のお腹に貼られた湿布の
ひんやりとした冷徹さ
歩けど歩けど進みもしない
地獄のような帰り道
前を横切ったクロアゲハ
道路に飛び出たと思ったら
速度違反の車が遮り
呆気ないまま散り散りに
思わず足を止めるも既に
風に揺れる四枚の羽
車は知らぬ存ぜぬと
過ぎ去って行った後でした
薄い雲のたなびく空を
目を細めながら見上げてみたら
そこに映るはクロアゲハ
瞳の奥から離れてくれない
かげおくりみたいにくっきりと
視線を戻して瞬くと
黒い燕尾の男の子が
病的なまでに白く細こい手を差し出して
それは美しく微笑ってる
思わず一歩踏み出した時
耳奥につんざくクラクション
なまぬるい風の勢いに押され
ぐらりと僕は倒れこむ
視線の先で顔を歪める
黒い燕尾の男の子
真っ白な手は既に仕舞われ
陽炎のように揺らめいて……
残っていたのはクロアゲハ
ピクリとも動かない彼を僕は
そっとひろいにいきました
残念。
ほんのあと少しだったのに