メトロノーム・ラプソディ 三浦志郎 2/7
ジャンル問わず打楽器奏者は
誰よりもこの器械と近しい
初心者からトップ・プロまで
ステイック・ストロークとコントロール
このエクササイズは欠かせない
この器械と相対して
たとえばこんな風に思ってみる
(全ての音楽は四分音符に帰結する
(多くの人生を四分音符になぞらえる
心臓の鼓動あるいは脈拍
呼吸のリズム
歩行のリズム (ANDANTE~歩くような速さで)
時を刻むセコンド(秒)の動き
1分4分音符1拍 1時間60拍
1時間4分音符1拍 1日24拍
1日4分音符1拍 1年365拍
この音符が現世界を
人と寄り添い流れてゆく
その拍数を人々は生きてゆく
この器械と相対して
どのくらい経つかを思ってみる
五十年以上!(もちろん断続的にだがー
(やれやれ あきれたよ 長い付き合いさ
自分は今まで何拍ストロークしたか?
音符を全て繋げて
(さて 地球を何周したろうか?
多くの人は
砂時計以上に使うことがない
こんな道具にも趣味はあって
現代的なデジタルを私は好まない
メトロノームとは
あくまで昔ながらの
ミニチュア・ピラミッドの三角形
音世界に屹立する塔でなければならない
生音でなければならない
時計の振り子とは逆向き
天を目指して針を振る
音楽時計
タイムキーパー
ベーシックを支配する独裁者
信じて盲従する
ついてゆく (いや ついてゆく では遅いのだ
ジャストで打って器械音を消さねばならない
様々な音符拡散
しかし底辺の守りは常に“四分”(しぶ)
この器械と相対して
信頼しつつも思ってみる
(これは始まりであって終わりではない
(これだけではついに音楽たり得ない
向き合う時は従順
離れては自立自由
メトロノームの無機質を忘れる
そうでなければ
生きた音楽が成立しない
BEATに緩急の表情
TIMEに人間的感覚
(いわゆる“タメて”と“つっこんで”
音楽に心を入れよう
血を通わせたい
人が演奏するとはそういうことだろう
様々な音符と音楽ジャンル
しかし底辺の守りは常に“四分”
(全ての音楽は四分音符に帰結する
この考えをメトロノームから教わった
今日も向き合う
常に従順に―
感謝はしている
器械が課すベーシックに だ
しかし現場では私が決める四分音符
服従と離反
その狭間に音楽は在り
ラプソディ……「狂詩曲」。本来、詩に由来する。
自由奔放な形式で叙事的内容を表現した楽曲。
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〇 付記
楽器メーカー以外に
時計メーカーもこの器械を造っているのは頷ける気がする。
私が使っているのは国内トップの時計製造会社のものだ。