昨日のこの場所 荻座利守
昨日のこの場所に
私は戻れるでしょうか
昨日のこの場所に
もう一度戻って
再び今日という日を
この場所で迎えることが
できたならば
今見ているものとは
まったく違った景色を
見ることでしょう
昨日のこの場所で
微笑みながら
手招きするあなたのもとへ
再びもどって
あのときの私に
まとわりついていた
尊大さや傲慢さを
破り捨てることができるならば
この先の
未来に残された全ての時間を
差し出してもいいでしょう
昨日のこの場所は
今と同じように見えながら
全く違う場所
もう戻れない場所
昨日のこの場所で
私を見つめていたあなたは
すぐそばにいるように見えながら
何万光年も離れた星ほどに
遥か遠くに佇んで
寂しそうな
淡い微笑みをうかべて
手招きしています
幽かにまたたく星のような
霞みゆくあなたの微笑みに
照らされるたび
追憶に胸を貫かれた私は
震えおののくのです
今日のこの場所に
何も残されていないこと
誰も待っていないことを
改めて気づかされ
ただ呆然と
立ち尽くすだけなのです