いの中の蛙 荒木章太郎
俺は四角い部屋の中
井の中の蛙
異の中で
上空に彷徨う
羊達を数える
俺が変なのか
お前達が変なのか
いつも数を数えて
眠れているのか
羊達の夢は管理されていた
他方、俺は隔離されていた
「井の中の蛙大海を知らず」
昔、そう言われていたが
今はサイバーな海
大海をよく知るが
そこに行くことはできない
二つの世界は
鞭のようにしなる世の風に
吹かれて声にならぬ想いは
大海に紛れ分断される
誰か言葉にしてくれ
異の中にいる意味を
うたにして届けたい
異なるものは
排他される怖れ抱きながら
世に風穴をあける
波紋を作る役割を担うが
羊達は変化を恐れる
だから、創られたものは
大抵は胃の中で
消費されその役割を終えるのだ
他方、世界は狭くなり
多様な役割の声を
知ることはできる
大海に近いとも言えるし
俺の死に場所は
まだ遠いとも言える