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スレッドNo.5214

星を隠す  人と庸

ふたつの相反する事がらの
ちょうど真ん中に立ってみる
(ただしいとまちがっている)
(たのしいとくるしい)
(うれしいとかなしい)
(すきときらい)

道標(みちしるべ)のようなふたつの光の
どちらからも遠いところに立ってみる
(ただしくもなくまちがってもいない)
(たのしくもなくくるしくもない)
(うれしくもなくかなしくもない)
(すきでもなくきらいでもない)

そこはまるで星のない夜のようで
みながすこしずつ隠しごとをしているこの世界に
とても似つかわしく思えるのだ

 ※

けれども今日の冷えきった夜空は
なにも隠しはしなかった
オリオン座のつづみ形
牡牛の顔のV字形
おおいぬの鼻のしめった光も
双子の頭の不公平なかがやきも

星たちは季節も時間も方角も示しているのに
わたしには標(しるべ)が見えず
きみにはわたし以外に寄る辺がない
そんな一人と一匹でどこへ行こうか

刃物のようにつめたい風は
意識をも切り裂いて 傷口からは
どこまでも歩いていく意志が流れ出る

かつてはそうだった

今はただ転ばないために
足を前に出し続ける
意志よりも希望よりも先に

 ※

(ただしさはくるしさになり)
(くるしさはまちがいをうみ)
(まちがいはたのしくもあり)
(たのしいとかなしくなったりする)
(そして)
(すきでありきらいであっていい)
(それらをうれしさがとおくからみつめている)

 ※

きみは走り出す
足は地面を何度も蹴って宙を舞い
この道がどこまでも続くと信じている

わたしも走る
地面からむりやり剥がした足は重いけれど
この道に終わりがあることだけは知っている

きみもわたしも笑わない
きみもわたしもしゃべらない
わたしたちだって隠すことがうまいのだ
きっとうまく生きていけるだろう

下り坂に転がされるように走っていると
星々はいつのまにか眼下に広がっている
あの星たちはみちびくためのものではない
その数だけの意識があるというしるしだ
そしてそこでは 様々な
相反する事がらが交錯しているのだろう

立ち止まったわたしたちの熱い呼気で
それらを少しかすませる
隠しごとをするには 今日は
明るすぎる夜だから

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