MENU
1,310,549

スレッドNo.5216

人月譚(じんげつたん) 上原有栖

月は見つめた 人を見ていた
遙か遠くの宇宙(そら)に浮かんで
夜毎に満ち欠け また満ちた
月は寡黙に 地上の人を見下ろした

人は見つめた 月を見ていた
遙か遠くの球体(ほし)を想って
手合わせ祈り 神を宿した
人は大いに語り 夜空の月を見上げていた

月は幾千の夜を照らし 人は幾万の物語を綴る
時を経て紡ぎ出された人月譚
引力に引き寄せられるかのように惹かれ合い
両者の関係は密に密に

言わず語らず夜空に在る月
それでも人は多くを享受し歴史に遺した
彫刻 絵画 詩 音楽
様々な月の姿は人々の想像を掻き立てた

月夜の帳が降りる頃
小さな町の工房で
キャンバスが散らかったアトリエで
本が積まれた薄暗い書斎で
観客の居ないひっそりとした舞台で
そして 悩み考え抜いた貴方の頭の中で
まだ誰も知らない名作は生まれる

優しく輝く月明かり 今宵もまた
創造の夜は 静かに更けて

編集・削除(編集済: 2025年02月28日 06:22)

ロケットBBS

Page Top