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スレッドNo.5223

感想と評 2/21~2/24 ご投稿分 三浦志郎 3/1

1 相野零次さん 「幻想の街」 2/21

先のコメントでリアリティ云々の件が出ていましたが、今作に限って言うと、リアリティの範疇をはるかに超えているので、今回その件は除外となります。
幻想の中で創る街。面白いのは人間も他の生きものもいない。ここまで来ると、―下品な言い方をすると―どう書いても作者の自由ということになるのですが。発想の角度を変えてみると「入れ物だけを創った」とすると、うなずける部分も出て来ます。文中あるように「ジオラマ造り」です。さながら脳裏で創った“幻想ジオラマ”。なんかタイトルにも似合いそう。メインは怪獣たちの破壊し尽くすシーンです。なかなかよく書き込まれていて、ちょっと特撮物を見ている気分になります。「好きな子の家」の件はちょっと注目できます。終わりの部分にも触れられていますが、自分の過去の現実に基づいて幻想したことがわかります。いっぽうで破壊シーンもさることながら、実は意外と思考・心情が語られている点です。ここに注目したい。凶暴な怪獣群に一人で立ち向かうことはできない。されるがまま。これは仕方がない。ただ奇妙なのは、この事態を肯定的に―もっと言うとーむしろ喜び楽しんでいる点です。壊されるより壊されないほうがいいに決まっているのです。ところがそうではない。このあたりの心情理由は触れてもいいかもしれないです。実体が無いから壊されても、また想像すればいい、と言ってしまえば、それまでなんですが、そのあたり、読み手は釈然としないだろうし、作者においても検討の余地はありそうです。佳作一歩前で。


2 こすもすさん 「灰色の街」 2/22  初めてのかたなので今回は感想のみお書きします。

よろしくお願い致します。第1連、すごく良いですね。すごく好きです。「笑みがない~無表情」「夢や希望がこぼれ落ち」などの適度な幻想のさじ加減のことです。現実をわずかに浮遊する感じです。儚げで、優しげで。いっぽう、2連はほぼ現実的叙景です。このちょっとしたトーンの違いが誠に惜しいのです。1連目が良いだけに、2連もそのムードをキープして欲しかった。タンポポにまつわる軽やかな幻想のことです。手の空いた時に考えてみてもいいでしょう。そうすれば、この詩はかなり愛すべき作品になると思うのです。あと感じたのは、淡白というか、もう少し書いてもいい。ちょっと遠慮しちゃったかな?そんな印象があります。そのあたりも含めて、また書いてみてください。僕の感触としてはとても好感が持てるからなんです。


3 上田一眞さん 「緋鳥鴨」 2/22

この評を書くにあたり、参考がてら緋鳥鴨の画像を見て楽しんでおりました。可愛いもんですね。ただしここに登場するそれは、やや剣呑か?おそらく、天敵か仲間に危害を加えられ警戒心いっぱいなのかもしれない。そんな場面での出会いといったことでしょう。
そうと察した上田さんの、いたわり、気づかい、優しさ、励ましの賦であります。出会い部分の簡潔な書き方。中間部のやりとりには具体性を持たせ、「夕焼け~」以降では気高い語調にして鴨を励ますと同時に詩の世界を一気に広げていきます。あたかも鳥が助走して空へ羽ばたくが如しです。「穢土」「疾く」「濫觴」など、古格な味わいの言葉も相応しく活きています。上田さんの強みとはテーマに向かってブレることなく正面から取り組む。その熱意と誠実です。今回もそれがあります。佳作を。


4 荒木章太郎さん 「いの中の蛙」 2/22

このタイトル言葉の意味を改めて調べてみました。曰く「狭い範囲の中だけで生活し、外の広い世界や多様な知識について理解がない状態」とあります。これをまず脳裏の片隅に置いておきます。
ところで、荒木さんの得意技として、同音意義語を上手く使い詩の中核に据えることが多いです。
あとは、自己の人間性について深く考える属性も加味していいでしょう。以上の2つを前提に僕が勝手に以下に推測したものです。
〇 「井」……上記の定義通り、自己のいる狭い世界。
〇 「異」……異端、超個性、アヴァンギャルド。この世界も狭いものかもしれない。
この二つを自己に置き換えて思考しているように僕には思われます。自分の持つ地図と照らし合わせてみる。 しかし、この二つは社会の風当たりがやや強いかもしれない。5連にそれを感じました。とりわけ「異」への反応です。ただ後半、それは「風穴をあける」
つまり何かが変えられるかもしれない、そんな予感も含んでいます。さらにもうひとつ。これは僕の勝手な推測ですが「羊達」です。
これは眠る時に数えるおまじないの事ですが、同時に「羊達」=「社会的に馴致された常識的でおとなしい人々」もっと言うと「スクエアな(英俗語・つまらない)人々」のことではないか?「異」の対立概念になりそうです。そんなせめぎ合いの中にこの詩はある、そう見てます。そんな中の荒木さんです。佳作です。


5 森山 遼さん 「キリスト教 存在を残して意味を消せない」 2/24

僕はキリスト教について幼児のように無知です。まあ、不勉強と言った方がいいでしょう。
従って、キリスト教周辺の知識上のコメントはしません、というか、できません。あくまで、この作品に即し思った事を書きます。
文字通り感想のみです。この宗教は現今は知らず、過去において各宗派が互いに相容れず、激烈な闘争を展開したようです。まあ、肉食人種だからそういうこともあったのでしょう。そんな歴史を初連で感じました。2連及びニーチェのくだりを読むと、これはキリスト教批判の詩として僕には読めるのです。何故ならば、ニーチェは反キリスト主義者だからです。ところが、ニーチェを「危険思想家」だと言う人も出てくる始末で、もう何が何だかわからなくなりました。教義や思想の解釈は難しいものです。ただ、ちょっと感じたのは、やや強い書き方をしているので、思想性も絡みますので、今後少し注意が必要かもしれません。そういった背景から評価は保留にします。


6 静間安夫さん 「日本語」 2/24

大分古い本を挙げ恐縮ですが、著名な数学者・藤原正彦氏(作家・新田次郎氏のご子息)の著作に、「祖国とは国語」があります。国語とは対極にいると思われる数学者にして、この著作です。当時ベストセラーになりました。「国語なくば数学すら成り立たず」といった主旨でしょうか。こんな例を引くまでもなく、僕はこの詩の主旨に大賛成であります。日本人の細やかな国民性に最もフィットした言語でしょう。いや、その感性こそがこの言語を完成させたと言えるほどです。
さて、この詩のことです。折からのオーバーツーリズムを背景として桜の木に擬人化しての問答。この設定の“いかにも感”と、述べていることの”正論“性。この狭間にあって評者はジレンマというか、大変悩むわけです(笑)。しかしながら、漢字・ひらがな・かたかなの用例を出しながら語った点は日本語の持つ特質を立体的に論じ注目されます。さらにその属性が文物、文化、工業にまで論点が広がるのは、この詩の裾野の広さと言っていいでしょう。最後は英語が話題になります。「まぁ、そう熱くなるなよ」―とありますが、僕も同感ですね。危険ということはないと思いますがね。まあ、程度問題でしょう。ここは視野を大きく取って、英語を引き合いに出しながらも、昨今の日本語への浅学、乱れを心配していると解釈したいと思います。佳作半歩前で。


7 白猫の夜さん 「月下の旅路」 2/24

まず初連と2連に語り手が存在するようです。3連「神無月~」以降、物語を語るように、女性の独白詩の体裁を取っています。これは男女の心中を描いたものでしょうが、今どき「ひい ふう みい」とは言いませんから背景は江戸時代や明治時代を感じさせます。文中「貴方」が男。最初の「ほら 一緒に」は男の生のセリフでしょう。気になるのは「幼い貴方」とある点ですね。そして先に死んだのは男のようで、しかも女が手をかけた、と取れなくもない。このあたりの前後関係が今ひとつはっきりしませんが、作者自身がそういった事は意図して避けたような気がしてます。それを補うように、たっぷりと心情吐露が成されています。ショッキングな事態を扱っていますが、主人公のひたむきな想いと、美しく優しい文体で終始したお陰で、悲しくも美しい作品になりました。佳作を。
しかし、今まであまりなかったモチーフでした。


評のおわりに。

いよいよ三月。早いものです。
僕にとっては、環境というか、風景が少し変わる春です。
みなさん、よい春をお迎えください。では、また。

編集・削除(編集済: 2025年03月02日 18:51)

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