MENU
1,158,364

スレッドNo.5224

眠り  秋さやか

まだ落ちない 
まだ落ちない

そろそろ
落ちそう


落ちる

もう













そんなふうに
いつのまにか
眠りに落ちていることが怖くて
意識と無意識の境目を探ろうと
布団の中のわたしは
何よりも真剣だった

真剣に
切実に
眠ろうとしていた
幼かったわたし

得体の知れない恐怖を抱えて
たそがれ泣きの延長に
いたのだろうか

目が覚める保証など
どこにもないのに
どうして気安く眠れよう

うすらうすらと
虹が消えてゆく
ひこうき雲が消えてゆく
わたしが消えてゆく

意識と無意識の境目を
知ることはできないのだと
残酷なほど明るい朝日に
諦めたとき

わたしはすこし
鈍くて脆い大人になった

そうして今はもう
なにも怖くないけれど

ただ時々

白昼にうとうとと
ついうっかり落ちた眠りから覚めると
今が朝なのか夜なのか
ここは一体どこなのか

わたしは
誰だったのか

からっぽな空へ
放り出されたような感覚に
早く脈打つ鼓動

どんどん遠のいていく
今しがたまで浸かっていた夢の
名残惜しさを振り切って

過去と
未来を繋ぐ記憶を
必死で手繰り寄せながら

幼稚園バスのお迎えに
慌てて駆け出してゆく

編集・削除(編集済: 2025年03月10日 09:33)

ロケットBBS

Page Top