MENU
1,306,546

スレッドNo.5239

きぼうに縋って  白猫の夜

青い月を描いて
赤い夜空を描いたその日
父から腹を殴られて
母から頬を叩かれた

小言を言いながら暴れる大人を
ただ息を潜めて眺めていたら
いつ間にやら気が済んだようで
残されたのは自我を消された部屋だった

ふと窓の外を見上げると
3階のベランダから見える
満天の星空と煌々と照る月
カラカラカラと窓をくぐって
ベランダに降り立つと
片方が働かない耳がひろう
隣の団欒の笑う声
何も感じなくしたはずなのに
流れる涙とこぼれた嗚咽

この手すりを乗り越えて
ここから飛び降りたら
……なんて

震える手と腕と
わななく足元
勇気を出したくて
ふと見上げた揺れる星の中
ぽつと光った"きぼう"の光

ISSの人工の光
あの人らの吸っている煙草の名前
夢見がちな人間の語る
ありえないほどの作り話

馬鹿らしい……馬鹿らしい!!
どうしてこんな時に限って
嘲るように蜘蛛の糸を垂らすのだろう!
これで私は希望にすがって
まんまと明日へと歩んでしまう
単純な私は喜んでしまう!!

ああ そうだ
今はどうかと耐えるしかない
薬とハサミを手に握る
菓子のように噛み砕いて
腕を引き裂いて
酩酊と痛みで鈍らせて

そうしたらいつか
消えてなくなってくれるはず
嘘が本当になれるはず
そうすればいつか
平穏に生きていけるはず

少し期待を諦めた
なまぬるい風のふく夜のこと
その風のなんとあたたかいこと

黄金の月を描いて
濃紺の夜空を描いた日
両親共々に頭を撫でられた
それを歪と思う自分を
薄れる意識の中
私は薄ぼんやりと眺めている

編集・削除(未編集)

ロケットBBS

Page Top