見知らぬ友人 温泉郷
少しのんびりとしてきたときに
見る夢は 追い立てられる夢
決まって明け方に見る
忙しい時には
そんな夢は見ない
悩んでいる時にも
そんな夢は見ない
すこし余裕ができて
すこしゆとりができて
のんびりとして眠りについた夜に限って
明け方に追い立てられる夢を見る
夢は何を求めているのか
起きている時間を
忙しく 慌ただしく 緊張しろと
命じているのだろうか
昨日の夢は
あまりにひどかった
何かに抗議をして
わたしと見知らぬ友人とが
焼身しなければならない
というのだ
わたしはそんなことはしたくなかった
だいたい 熱いだろうし
そんなことをしても
きっと大した効果もないだろう
でも 見知らぬ友人の方は
やる気満々で
「これで歴史を変える」とか言っている
時間が迫ってくる
周囲の無責任な群衆が
友人とわたしに
灯油だかガソリンだかを掛ける
残酷な笑いの輪の中に
少女の悲し気な憐憫の顔
ああ これまでか
やけくそな覚悟を決めた
誰かが何の躊躇もなく火を放った
どういうわけか
わたしだけが燃え上がり
素早く皮膚が縮み
焦げていくのに
見知らぬ友人は平然と席を外そうとする
そうはいくか!
わたしはそいつに抱き着き
そいつも炎上した
そいつの表情は見えなかった
そいつの顔を見ようとして
のぞき込んでも
表情は見えなかった
そこで 目が覚めた
あの見知らぬ友人
あの美しい友人は
最後の最後に裏切ったのだが
あいつはやっぱり
自分だったのだろうな