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スレッドNo.5253

ずぼらなふうちゃん  樺里ゆう

ふうちゃんは
私が十八の頃に創った
キャラクターだ

「ずぼらなふうちゃん」というタイトルで
誰に見せるものでもない、
私だけが読む絵本にしようとしていた
結局今も 未完成のままだが

 ふうちゃんは ずぼらで 面倒くさがり屋の女の子
 食べることも 寝床から出ることも
 生きることも 面倒で

 ああ 食べなくても生きていける
 霞とか 風とか 無機物になれたらいいのに
 なんて夢想しながら
 とりあえず
 心臓を動かし続ける体に
 従っている

 生きていたい理由はないけど
 しにたい理由もないから

ふうちゃんは
当時の私の心の内を
そのまま反映させたキャラクターだった

私が このお話を
完成させられなかったのは
ふうちゃんの行く末が
どうしても思い描けなかったから

食事も着替えも面倒くさがる
ふうちゃんにだって
服や料理を与えてくれる誰かがいる
そう思うと
鉛筆を握っていた私の手は
動かなくなってしまったのだ

生きていくのが面倒だと思ってしまう自分を
肯定したくて
私はふうちゃんを創ったのに

誰かの庇護を受けながらそんなこと思うなんて
許されない気がしていた
私は

自分の心の中ですら
自分の心を守ってやれなかった

今の私なら あの頃の私に
息苦しいという感情は否定しなくていいと
言ってやれるのに

ふうちゃん
実家の私の部屋にある
スケッチブックの中で
今も眠っている あなた

あなたの物語を決着させることは
今の私にも できなくなってしまったよ
今の私はもう
生きることが面倒だと
思わなくなったから

だから ふうちゃん
あなたに
この詩(うた)を捧ぐよ



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投稿エラー対策で、第五連の言葉をひらがなにしています。
お手数ですが漢字に置き換えて読んでいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

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