地面と空 江里川 丘砥
わたしは地面
青い空から一番遠い
茶色の地面は
いつのまにか
灰色のアスファルトになっていた
人が踏み歩き
車を転がす
タイヤ痕を残していく
灼熱を照り返すアスファルトになっても
わたしはそこにいる
踏みしめる靴底も
行き交う車の裏側も
ただ過ぎていくだけ
焦点を合わせるのは空にだけ
空の青がうらやましいわたしは
いまも灰色のまま
ガタガタに傷ついた跡は
まっさらな灰色で上塗りされる
マンホールにはきれいな絵がつき
写真に撮られ
一瞬の話題となっては
また踏まれていく
空の青を見ていたいから
ひび割れてもまた直る
隙間から草が生えたなら
最下層から見上げる緑と青のコントラスト
誰でもは見られない景色
青でない空もある
灰色の雲に覆われる日も
真っ暗な闇夜も
やがて朝を迎える
いつかまた晴れる
太陽を一面に受けとめて
真っ赤に焼かれたような朝や夕
その時にしか見えない色を映す
雲が覆い隠しても
その向こうには青い空があるように
硬いアスファルトの下には
根が張る土があることを
空が知っていてくれるのなら
空には見えないその色を
一番遠くから見ていてあげる
太陽が壊れて
空も地面もなくなるまで