裏側のないそれ
君を それと 呼ぼう
僕が 歩いているとき
机に向かって 僕が タバコを
ふかしているとき
僕を見つめる
君を
それと 呼ぼう
君はいつも僕を憂鬱にさせる
君は悪魔ではないが
良心と呼ばれるものでもない
君は特に僕を狙っているようだ
君は宇宙の塵のように
つかみどころがなく
それでいて普遍に存在する
君は
僕が何か楽しいことをしようとすると
いつも僕をつつんでしまう
君は太陽が好きで
女の子が嫌いらしい
君はたぶん明るい人付き合いのいい それ なのだろうが
君は 僕の前では思い出したように
口をちょっと 歪めて 笑うのだ
僕は君から逃れたいが
そうすると僕もいなくなる
僕は知っているらしいのだが
君を使って
僕は
生きているようなのだ
でも 暗闇のなかでは僕は
君を見たことがない
君はおそらく
暗闇が嫌いなのだろうが
君にはもう一方の影ってものがないのだ
君は 宇宙のように 巨大だが
君には裏側がないのだ
そうして君は
ぼくの持ってるこの 裏側を 狙っている
君は 僕を 憎んでいるかも知れないが
本当は
きっと
僕が好きなのだ