SINGER ”A・N”という生き方 三浦志郎 3/7
このFEMALE・SINGERを
別に
好きでもない
嫌いでもない
ただ思うのは
過去の多くを
優れた曲に恵まれ
粒立ちの良い
メロディと言葉に包まれた
―そう思ってはいる
当時
アイドルとしては
少し斜に構え
なかなか挑発的で
影のようなものも纏っていた
―そんな気もする
すでに
六十歳を迎えるという
今は穏やかに
シンプルなピアノトリオ+アルファで
ジャズ風にセルフカヴァーする
私に言わせれば
純粋なジャズではない
が
彼女にとって悪くはないだろう
忘れられたわけではないが
すでに華やかな場には出てこない
あるいは再び出るかもしれない
迷いながらもいつかは
自分自身を見つめること
今は決めかねているから
今は誰もわからないから
現在進行形の謎
若さという蓄えが消え
もしも これから
思う人にのみ思われるだけになったとしても
常に実(じつ)ある支持者から守られる
そんな人々と生きてゆく
過去は置いてきても
失われはしないから
時代と伴走した事実があったから
これからも
自己という意思は続くのだから
「WHAT ARE YOU DOING THE REST OF YOUR LIFE?」
( 人生の残りを あなた どうします? )
そんな生き方の分岐に立つ
ささやかな問いかけもあるのだ と
彼女が見つけ
答えようとしていることをー
私は記憶しておきたい
*終わり近くの英文はジャズのスタンダードナンバーのタイトルを引用した。