時間と気動車 こすもす
時間という一本の線路がある
わたしは空色で一両だけの気動車だ
今この線路を走っている
ガタンガタン
ゴトンゴトン
昨日 今日 明日
先週 今週 来週
先月 今月 来月
去年 今年 来年
前世紀 今世紀 来世紀
線路は果てしなく続いている
長い道のりだ
時には急な坂がある
ガタガタガタ
ゴトゴトゴト
時には向かい風も吹く
ガタガタガタ
ゴトゴトゴト
それでも走り続ける
長く走っていると
線路が深い霧に覆われることがある
進んでいるのか
退いているのか
停まっているのか
わからなくなるときがある
長く走っていると
この線路と並行して
別の線路が見えることがある
その線路を
オレンジ色で一両だけの気動車が
走っている
その気動車を見ていると
どちらの気動車が
本当のわたしなのか
わからなくなってしまう
やがてその線路は離れてゆき
見えなくなった
ふと思う
これから走る線路の先と
今まで走ってきた線路は
はるか遠いどこかで
つながっているのでは
ないだろうか
ふと思う
この線路は
あるように見えているだけで
もともとないのだろうか
わたしは今日もこの線路を走る
ガタンガタン
ゴトンゴトン……