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スレッドNo.5282

批評です 2/25〜2/27までのご投稿分の評です。  滝本政博

批評です 2/25〜2/27までのご投稿分の評です。  滝本政博


受け取ってもらえなかった愛は  津田古星さま

選び抜かれた言葉でとても繊細に書かれています。
特に三連目がいいですね。
<小鳥のようにちょこんと
 あなたの肩に留まって
 きっとあなたを見守り続けている>
など素晴らしいイメージです。

一連、二連で喪失感を疑問形で書き、三連で
<きっとあなたを見守り続けている愛を受け取らなかったあなたを
 約束を果たさなかったあなたを
 幸多かれと>
という、あなたを見守る視点が挿入される。
シンプルだがよい構成です。
三連目でこの立ち位置、世界観に立つことが尊いとおもう。

最終連はなくても成立しているというか、わたしはない方がよいとおもうのです。あなたに限定して書かれたそれまでの詩が一般的に広がるのはわかるのですが、どうしても付け足した感じ、違和感があります。
ご一考を。
佳作一歩手前で。



欲望のソネット  松本福広さま

どうしましょう、以下きつい言い方になってしまいますが、感じたことをそのまま書きます。

一連目
<乙姫様が開けては行けない玉手箱を
 お土産に渡したのは何故なのでしょう?
 ゼウス様はどうして開けてはいけないパンドラの箱をもたせたのですか?
 食べてはいけない知恵の実を
 どうして神様は作ったのですか?
 食べてはいけない知恵の実を
 どうして神様は植えたのですか?
 どうして人は兵器を作り
 そのボタンを押すに至ったのでしょうか?
 自分の気持ちを満たす為誰かを殺したい欲望を
 人間は何故持ったのでしょうか?>
並べられた項目はどれもそれぞれ、文学、神学等の大きな命題であり、それぞれ個別に論じても大変な問題であります。したがって、
<なぜ…………
 私たちは…………>
とひとまとめに考えをうながすのには違和感を感じます。
思い切って、一連目を無くし、二連目から始めると主題が読み取りやすくなると思います。

<それでも
 神様はヒトに寿命たるものを
 授けました>
これは旧約聖書の関係から挿入されたのでしょうか?その後の鳥の話とは関連性が薄く余分なものに感じます。

つまり、全体にテーマが生煮えで一本筋が通っていない感じなのです。
一つの詩にいろいろ詰め込み過ぎたのかもしれません。

<時間は転調を望んでしまう。>は面白い表現ですね。
こういう、キーになる言葉を中心に作品を広げてゆくのもありだと思います。



18歳と364日  喜太郎さま

19歳はやはり特別な歳だとおもいます。
安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」など思い出しました。良い歌なのでユーチューブののURLを貼っておきますね。



ポール・ニザンの小説「アデン アラビア」は
僕は二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。
で始まるそうですが、これが十九歳でもいっこうにおかしくありませんね。

さて、御作です。
若い感受性が正直に綴られていて好感がもてます。
ラストの三行がいいですね。
<きっと普通のいつもの朝が来て
 心の中でもこんなものかと感じるんだろうな
 そんな感じで良いのかな まだ今の未熟な私には……>
ぜんぜん大丈夫だよと初老の私は涙目で応援するのでした。



水溜り  樺里ゆう様

九年ぶりに自転車に乗りかつての感覚を思い出す。その身体感覚、不思議なものですね。
わたしも、きつくぱんぱんに空気を入れた自転車に乗った時の感じや、角を曲がってゆく気持ちなど思い出すことが出来ます。
体が覚えているんですね。
この詩を読んで、水溜まりを渡る感じも蘇りました。ああ、そうそうそんな感じというふうに。

二連目がいいですね。
<蜘蛛の巣のように
 花火のように>
という比喩が光ります。
蜘蛛の巣のように、とはなかなか書けないかと思います。
「詩は経験である」といったのはだれであったか?とにかく身体感覚は読者の共感を呼びます。

後半は人間の脳の不思議に移行してゆき、
<忘れていた私に
 出会い直す>
小さな奇跡へと思いが至ります。
 


夜の山道  こすもす様

よく書けていて気持ちが伝わってきます。
<街の灯りが見える
 その瞬間ただ走った
 街の灯りが近づくにつれ
 寂しさや不安が
 道の後ろに落ちてゆく
 辺りの空気が
 暖かくなってゆく>
このあたりのなど心理描写も上手いとおもいます。

<目が覚めた
 窓から朝の光がさしこんでいた>
というふうに、終わりはいわる夢落ちであります。
夢オチとは、物語の最後に「それまでの出来事は、実はすべて夢だった」という結末を明かして終わることですが。
夢落ちをやめて<街に辿り着くと人影が見えた>で、終わりにすると、作品は一種の臨場感のある幻想譚として読めます。
夢であったと説明的にしないで、そのように突き放して作品を終える手もあったと思います。

また、夢落ちであったとしても最終連の二行は無い方がよいと思いました。



黄色い囚人陽気に踊る  佐々木礫さま

佳作とします。
とてもリズムがよいと詩だとおもいます。
基本七五調で破調を含み書かれています。
また「ドンタカタン」のオノマトペがいろいろと変化してゆく、その変遷を見て行くだけでも面白い。
ドン、ドンタカタン → ドン、タカドンタンドンドン? → ハァタカドンタンハァドンタン → ハァドンタカタンドンタカタン! →ドンタカタンハァ
これらはステップの音として何度でも反復されることによって、詩の中にリズムが生じ強い効果を生んでいます。
猥雑なエネルギーを感じます。
ある種の狂気がユーモアたっぷりに描かれます。

 前髪ナイフで切り裂いて
 おかっぱ頭で陽気に踊る
 黄色い囚人陽気に踊る
 おかっぱ頭で「ドンタカタンハァ」
 目を見開いて「ドンタカタンハァ」
なんてコミカルで印象的でした。



星を隠す  人と庸さま

佳作とします。レベルが高くよい作品だと思います。
詩人個人の抽象的な感覚が可視化されて書かれています。
ひとつの手法というものが詩の中にあり、抽象性が上手く表現され、独自の詩的空間を展開しています。
ある箇所では習慣的な語の結び付きをあえてはずして、日常的な世界から脱していきますが、これは感動や真実を表現するためにあえてこうした使い方をしているのでしょう。成功していると思います。

<きみは走り出す
 足は地面を何度も蹴って宙を舞い
 この道がどこまでも続くと信じている

 わたしも走る
 地面からむりやり剥がした足は重いけれど
 この道に終わりがあることだけは知っている>
ここのフレーズがすきです。いいなー。本格的にいいです。

言葉のチョイスがよく、読ませます。

また、( )を上手に使い、思考の流れを読者に示してゆきます。

具体的には<そんな一人と一匹でどこへゆこうか>とかかれていることから、犬との散歩の情景を描いたものかもしれませんが、それがこんな風な作品になるとは、お驚きです。

編集・削除(編集済: 2025年03月10日 05:43)

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